インドGSTの基本:CGST/SGST/IGST、2026年の税率構造、登録・e-invoice・ITC・申告
インドの物品サービス税(GST)について、課税の仕組み、2025年9月の税率見直し後の税率構造、州ごとの登録、e-invoiceとe-way bill、仕入税額控除、申告の種類と期限、サービス輸出とLUTを2026年10月時点で整理します。経理・営業管理向け。
このガイドでわかること
- GSTの基本構造(CGST・SGST・IGST)と、どの税がいつかかるか
- 2025年9月22日の税率見直し(いわゆる「GST 2.0」)後の税率構造
- 登録が必要になる条件と、州ごとに登録が必要な理由
- e-invoice・e-way bill・仕入税額控除(ITC)・申告(GSTR)の実務ポイント
- サービス輸出とLUT(Letter of Undertaking)の使い方
1. 仕組み:CGST・SGST・IGST
| 取引 | かかる税 | 例(税率18%の場合) |
|---|---|---|
| 同じ州の中での販売 | CGST+SGST(またはUTGST) | 9%+9% |
| 州をまたぐ販売・輸入 | IGST | 18% |
| 輸出・SEZ向け供給 | ゼロ税率(IGST払いまたはLUT) | 0% |
どの税になるかは「供給地(Place of Supply)」で決まります。物品は原則として引渡し地、役務は原則として受領者の所在地です。原油・ガソリン・アルコール飲料など一部の品目は、GSTではなく従来の州税・物品税の対象のままです。
2. 税率構造(2026年10月時点)
GST評議会(GST Council)の第56回会合(2025年9月3日)の勧告により、2025年9月22日から次の構造になりました。
| 区分 | 税率 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 非課税・ゼロ | 0% | 生鮮食品、一部の医薬品、UHT牛乳など |
| 軽減税率 | 5% | 生活必需品、医療関連、農業機械、旧12%区分の多く |
| 標準税率 | 18% | 家電・電子機器、多くの工業製品、多くのサービス、セメント |
| 特別税率 | 40% | 清涼飲料、一定の自動車、たばこ・パーンマサラ等 |
旧来の12%と28%の区分は原則として廃止されました。金・宝飾品などには別の特別税率があります。補償税(Compensation Cess)は大半の品目で廃止され、たばこ・パーンマサラについては2026年2月1日から、補償税に代えて物品税と新たな目的税がかかる仕組みに移行しています。
自社製品の正確な税率は、HSコード(サービスはSAC)ごとに告示で確認してください。税率が下がった品目では、仕入の税率が売上の税率より高い「逆ざや(Inverted Duty)」が生じ、ITCが積み上がる場合があります。
3. 登録
登録が必要になる基準
| 区分 | 年間売上の基準(一般の州) | 特別州の一部 |
|---|---|---|
| 物品のみの供給 | 400万ルピー(40ラク) | 200万ルピー |
| 役務の供給 | 200万ルピー(20ラク) | 100万ルピー |
ただし、次の場合は売上に関係なく登録が必要です。
- 州をまたいで物品を供給する
- リバースチャージで納税義務がある
- EC事業者を通じて販売する、またはEC事業者である
- 入力役務分配者(ISD)、非居住課税者など
日系子会社は、ほぼ全社が設立直後に登録するのが実情です。
州ごとの登録
GST番号(GSTIN)は州単位です。本社がハリヤナ州、工場がタミル・ナドゥ州なら2つの登録が必要で、同じ会社でも州が違えば別の事業者として扱われます。州をまたぐ本支店間の役務提供には、原則として課税が生じます。拠点の州を選ぶ際の考え方は州の選び方を参照してください。
2025年11月からは、低リスクの申請者を対象に、3営業日以内に自動で登録される簡易制度も導入されています。
4. インボイス・e-invoice・e-way bill
- 税インボイス:GSTIN、HSN/SAC、税率、供給地などの記載が必要です。
- e-invoice:AATOが5クロールを超える事業者は、B2B取引のインボイスを請求書登録ポータル(IRP)に登録し、IRN(請求書参照番号)とQRコードを取得します。AATO10クロール以上は発行から30日を過ぎると登録できません(2025年4月以降)。
- e-way bill:一定額(原則5万ルピー)を超える物品を輸送する際に、事前に電子発行が必要です。州によって州内輸送の基準額が異なります。
5. 仕入税額控除(ITC)の条件
ITCを受けるには、次のすべてを満たす必要があります。
- 有効な税インボイス等を保有している
- 物品・役務を実際に受け取っている
- 仕入先がGSTR-1で報告し、自社のGSTR-2B(自動作成の仕入明細)に反映されている
- 仕入先が実際に税を納付している
- 翌年度の11月30日(または年次申告の提出日の早い方)までに請求している
社用車・飲食・福利厚生など、ITCが認められない「ブロック・クレジット」もあります。また、仕入代金を180日以内に支払わないと、ITCを戻し入れる必要があります。
6. 申告の種類と期限(2026年10月時点)
| 申告 | 内容 | 期限 |
|---|---|---|
| GSTR-1 | 売上明細 | 翌月11日(四半期制は四半期終了翌月13日) |
| GSTR-3B | 月次の要約申告と納税 | 翌月20日(四半期制は22日または24日) |
| GSTR-7 | GST上の源泉徴収(政府機関等) | 翌月10日 |
| GSTR-6 | 入力役務分配者 | 翌月13日 |
| GSTR-9 | 年次申告(売上2クロール超は義務) | 翌年度12月31日 |
| GSTR-9C | 調整表(売上5クロール超) | 翌年度12月31日 |
延滞時には、遅延手数料と年18%の利息がかかります。期限は告示で延長されることがあるため、公式発表で確認してください。
7. 輸出・サービス輸出とLUT
輸出とSEZ向け供給は「ゼロ税率供給」です。方法は2つあります。
- LUT方式:IGSTを払わずに輸出し、関連する仕入のITCを還付請求する
- IGST納付方式:IGSTを払って輸出し、その税額の還付を受ける
LUTはGSTポータルで年度ごとに提出します(年度開始前の提出が推奨)。サービス輸出に該当するには、供給者がインド国内、受領者が国外、供給地が国外、外貨(またはRBIが認める方法)での入金、同一法人の本支店間でないこと、の5条件がすべて必要です。
2026年度予算(Finance Act, 2026)で、仲介業者(インターミディアリー)の供給地を「供給者の所在地」とする特例(IGST法第13条(8)(b))が削除されました。日本本社のためにインドで販売支援を行う子会社などは、サービス輸出に該当する余地が広がった一方、適用開始日の解釈に議論が残っています(2026年10月時点)。
よくある失敗・注意点
- 新しい州で倉庫や事務所を開いたのに、その州でGST登録をしていない
- 仕入先がGSTR-1を出しておらず、ITCが取れない(仕入先管理の不足)
- e-invoiceの登録を後回しにし、30日の期限を過ぎる
- LUTの更新を忘れ、輸出時にIGSTの負担や還付手続きが発生する
- 日本本社への役務提供を「輸出」と思い込み、5条件を満たしていない
次にやること
- 設立手続きの中でのGST登録の位置づけは現地法人の設立手順を確認する
- 毎月の申告期限を年間コンプライアンス・カレンダーに登録する
- 法人税・源泉税はインドの法人税・源泉税と日印租税条約の基本とTDS実務ガイドを参照する
- 本社との取引価格は移転価格の基本で確認する
個別の判断は専門家(CA・弁護士・税理士)にご確認ください。
Questions on this topic
GST登録は必須ですか?
合計売上高が登録基準額を超える場合に登録が必要で、通常の州では物品の供給で400万ルピー(40 Lakh)、サービスの供給で200万ルピー(20 Lakh)が基準とされています(2026年10月時点)。ただし、州をまたぐ物品の供給やEC事業者などは売上高にかかわらず登録が必要です。輸入時のIGSTや仕入税額控除を考えると、事業会社は早期に登録するのが一般的です。
GSTの税率はどうなっていますか?
2025年9月22日から、GSTは主に5%と18%の2段階の税率に整理され、一部の奢侈品・有害品には40%が適用されています(2026年10月時点)。個別品目の税率はHSN/SACコードによって決まるため、主要な商品・サービスは早めに分類と税率を確定させてください。
電子インボイス(e-invoice)は義務ですか?
過去いずれかの年度の合計売上高が5 Crore(5,000万ルピー)を超えた事業者は、BtoBの請求書を請求書登録ポータル(IRP)に登録する必要があります(2026年10月時点)。合計売上高10 Crore以上の事業者は、請求書の日付から30日以内に登録しないとIRNが発行されません。設立直後でも売上計画に応じて請求システムを準備してください。