インド子会社 設立後3か月の必須手続きチェックリスト
設立証明書を受け取った直後から約3か月の間に必要な手続き(取締役会、監査人選任、FC-GPR、INC-20A、GST、労務・州登録など)を、期限付きのチェックリストにまとめました。現地法人の立ち上げ担当者向けです。
このガイドでわかること
- 設立後3か月以内に期限が来る会社法・外為法・税務・労務の手続き
- それぞれの期限の起算点(設立日、取締役会日、株式割当日など)
- 遅れやすい手続きと、その理由
期限付きチェックリスト
起算点は「設立日」=設立証明書の日付です。
| 期限の目安 | 手続き | 根拠・提出先 | メモ |
|---|---|---|---|
| 設立後30日以内 | 最初の取締役会の開催 | 会社法173条 | 銀行口座、監査人選任、登記住所、会計年度などを決議 |
| 設立後30日以内 | 最初の会計監査人(CA事務所)の選任 | 会社法139条(6) | 最初の定時株主総会まで在任 |
| 選任から15日以内 | 監査人選任の届出(ADT-1) | MCA | 第1期監査人も実務上届け出るのが一般的 |
| 設立後30日以内(設立時に未届の場合) | 登記住所の届出(INC-22) | MCA | 賃貸契約・所有者の同意書・公共料金請求書が必要 |
| 送金受領から60日以内 | 株式の割当て | 外為法(NDI規則) | 期限を過ぎると返金義務(その後15日以内) |
| 割当てから15日以内 | 割当報告(PAS-3) | MCA | 評価書・取締役会決議を添付 |
| 割当てから30日以内 | FC-GPRの提出 | RBI FIRMSポータル(AD銀行経由) | 事前にEntity Master登録が必要 |
| 設立後60日以内 | 設立時株主への株券発行 | 会社法56条 | 電子化(Demat)対象かも確認 |
| 設立後180日以内 | 事業開始届(INC-20A) | 会社法10A条 | 資本金払込の証憑(銀行明細)を添付 |
| 課税要件を満たした日から30日以内 | GST登録 | GST法 | SPICe+で申請済みなら番号を確認 |
| 従業員の雇用開始時 | 職業税(雇用者登録・事業者登録) | 州法 | マハーラーシュトラ州、カルナータカ州など導入州のみ |
| 事業所開設後(州により30日以内など) | 店舗・事業所法の登録 | 州法 | オフィスのある州ごとに必要 |
| 適用人数に達した時 | EPFO・ESICの登録 | 社会保障法典 | SPICe+で登録済みなら番号を確認 |
| 随時(毎月7日まで) | 源泉税(TDS)の納付 | 所得税法 | 家賃・専門家報酬の支払開始時から発生 |
| 継続 | 法定帳簿の備え付け | 会社法88条ほか | 株主名簿、取締役名簿、議事録、会計帳簿 |
主な手続きの補足
最初の取締役会
議題の例は、登記住所の確認、銀行口座開設と署名権者、最初の監査人の選任、株券の発行、会計方針と会計年度(4月〜3月)、外部の会計・税務代行先の起用です。議事録は取締役会後30日以内に作成し、署名して保管します。インド外の取締役はビデオ会議で参加できますが、定足数と議事録の要件を確認してください。
INC-20A(事業開始届)
株主が引き受けた資本金の払込を受けたことを、取締役が宣誓して届け出る書類です。提出前は事業開始や借入ができず、未提出が続くと罰金や会社登記抹消の対象になり得ます。銀行口座開設と送金が遅れると間に合わなくなるため、180日の期限を逆算して動いてください。
FC-GPR
外貨受領証明(FIRC)、外国投資家のKYC報告書、株式評価書、取締役会決議、専門家の証明書などを添付します。期限を過ぎると遅延提出手数料(LSF)が課され、長期の遅延は外為法違反として罰則の対象になります。
GST登録
年間売上が基準額(サービスは原則200万ルピー、物品は州により400万ルピーなど)を超える場合のほか、州をまたぐ物品供給や電子商取引事業者への供給など、売上に関係なく登録が必要なケースがあります。仕入税額控除を受けるため、売上が立つ前から登録する会社も多くあります。詳しくはGSTの基本を参照してください。
労務関係の登録
- EPFO(従業員積立基金):従来、従業員20人以上で強制適用です。
- ESIC(従業員国家保険):従来、従業員10人以上の事業所で、一定の賃金以下の従業員が対象です。
- 2025年11月21日施行の社会保障法典でESICの適用地域が全国に広がるなど、制度変更が続いています。各州の規則と適用日については労働法典ガイドで確認してください。
- 日本からの駐在員も、日印社会保障協定に基づく適用証明書がない限りインドの年金制度の対象になる点に注意してください。
法定帳簿
株主名簿(MGT-1)、取締役・主要経営者名簿、担保登記簿、取締役会・株主総会の議事録などを登記住所で保管します。電子保管も可能ですが、改ざん防止とバックアップの体制が必要です。
よくある失敗・注意点
- 設立後すぐに取締役会を開かず、監査人選任の期限(30日)を過ぎる。
- 資本金送金が遅れ、INC-20Aの180日期限に間に合わない。
- FIRMSのEntity Master登録に時間がかかることを知らず、FC-GPRの30日期限を過ぎる。
- 職業税や店舗・事業所法の登録を、オフィス所在州ごとに行う必要があることを見落とす。
- 家賃や専門家報酬の支払時に源泉徴収(TDS)を行わず、後で利息・罰金が発生する。
次にやること
- 4月以降の年次手続きは年間コンプライアンス・カレンダーで確認してください。
- 追加出資や親子ローンは資金供給と利益還流、税務全般は日印の税務の基本を参照してください。
個別の判断は専門家(CA・弁護士・税理士)にご確認ください。
Questions on this topic
子会社の設立にはどれくらいの期間がかかりますか?
MCAの統合申請(SPICe+)自体は書類が揃えば比較的短期間で処理されますが、実務上は準備を含め数週間から2か月程度を見込むのが一般的です。時間がかかるのは、日本側書類の公証・アポスティーユ、取締役の電子署名(DSC)取得、社名の承認などの準備段階です。設立後の銀行口座開設や外資受入報告までを含めたスケジュールで計画してください。
出資金を送金した後に必要な手続きは何ですか?
株式を割り当てた後、AD銀行を通じてRBIのFIRMSポータルでFC-GPRを提出します。一般に割当から30日以内が期限で、遅れると遅延提出手数料が課されます。事前にFIRMSで会社情報の登録(Entity Master)を済ませ、株式価格の評価書も準備しておきます。
設立後すぐにやるべき手続きは何ですか?
銀行口座の開設と資本金の払込み、FC-GPRの提出、法定監査人の選任、取締役会の開催、GST登録(必要な場合)、州の店舗・事業所法の登録などが代表的です。従業員を雇う場合は、EPF・ESI・職業税の登録も必要になります。期限のある手続きが多いため、チェックリストで管理してください。