インド子会社(Private Limited)の設立手順と期間・費用
日本の親会社がインドに非公開会社を設立する手順を、DSC取得からSPICe+申請、資本金払込、FC-GPR報告まで順に解説します。日本側で準備する書類と、期間・費用の目安も示します。
このガイドでわかること
- 非公開会社(Private Limited Company)設立の全体の流れと各ステップの所要日数
- 居住取締役要件と、日本側で準備する書類(アポスティーユを含む)
- 設立にかかる期間・費用の目安と、資本金払込後の外資報告(FC-GPR)
事前に決めること
| 項目 | 決める内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 社名 | 候補2案 | 既存の会社名・商標と類似しないこと。末尾は「Private Limited」 |
| 株主 | 日本親会社+もう1名 | 2名以上必要。100%子会社でも親会社の役員個人や関係会社を名義株主にするのが通例 |
| 取締役 | 2名以上(居住取締役1名以上を含む) | 居住取締役が確保できないと設立できません |
| 資本金 | 授権資本と払込資本 | 授権資本150万ルピー以下なら登記手数料なし。事業計画上の必要資金から逆算 |
| 登記住所 | インド国内の住所 | 設立後30日以内にINC-22で届け出ることも可能 |
| 事業目的 | 定款(MoA)の目的条項 | FDI規制(禁止業種・政府認可ルート)に当たらないか確認 |
居住取締役の確保
会社法149条(3)により、取締役のうち1名以上は当該会計年度に182日以上インドに滞在している必要があります。新設会社では設立年度の残り期間に按分して判定します。赴任予定の駐在員を充てるか、現地の信頼できる人材を起用するのが一般的です。
設立の手順
- 日本側書類の準備・認証(1〜3週間) 親会社の登記事項証明書、定款、取締役会議事録などを英訳し、公証役場で認証、外務省のアポスティーユを取得します。
- 電子署名証明書(DSC)の取得(数日) 取締役・申請者全員がクラス3のDSCを取得します。外国人もオンラインの本人確認で取得できます。
- 社名の予約(SPICe+ Part A、数日) 候補名を申請し、承認後20日間有効です(延長により最長60日)。
- 定款等の作成 電子定款(e-MoA:INC-33)、電子付属定款(e-AoA:INC-34)、取締役就任承諾書(INC-9等)を準備します。海外株主の署名頁はアポスティーユ付きで原本を送付します。
- SPICe+ Part Bの申請 取締役識別番号(DIN)の付与、PAN・TANの申請を同時に行います。あわせてAGILE-PRO-S(INC-35)で、物品サービス税(GST)登録、従業員積立基金(EPFO)・従業員国家保険(ESIC)登録、銀行口座開設申請などを一括で申し込めます。
- 設立証明書(Certificate of Incorporation)の取得 会社識別番号(CIN)、PAN、TANが記載されます。
- 銀行口座の開設と資本金の送金 AD Category-I銀行に当座口座を開き、親会社から出資金を送金します。銀行から外貨受領証明(FIRC)とKYC報告書を受け取ります。
- 株式の割当て 取締役会で割当てを決議し、会社法上の割当報告(PAS-3)を提出します。発行価格は公正価値以上でなければなりません(チャータード・アカウンタント等の評価書が必要)。
- FC-GPRの提出 FIRMSポータルでEntity Master登録とBusiness User登録を済ませ、割当てから30日以内にFC-GPRをAD銀行経由で提出します。
日本側で準備する書類リスト
| 書類 | 用途 | 認証 |
|---|---|---|
| 親会社の履歴事項全部証明書(英訳付き) | 株主(法人)の存在証明 | 公証+アポスティーユ |
| 親会社の定款(英訳付き) | 株主確認 | 公証+アポスティーユ |
| 親会社の取締役会議事録(インド子会社設立・出資・代表者指名) | 授権の証明 | 公証+アポスティーユ |
| 株主署名頁(e-MoA/e-AoAの署名)・委任状 | 定款への署名 | 公証+アポスティーユ |
| 日本人取締役のパスポート | 本人確認・DIN付与 | 公証+アポスティーユ(写し) |
| 日本人取締役の住所証明(銀行明細・住民票の英訳など、2か月以内) | 住所確認 | 公証+アポスティーユ |
| 実質的支配者(UBO)申告書 | KYC | 署名 |
日本の公文書には外務省がアポスティーユを付けます。私文書は先に公証人の認証を受けてからアポスティーユを取得します。発行日から一定期間内の書類を求められることが多いため、取得のタイミングを揃えてください。
期間と費用の目安(2026年10月時点)
| 段階 | 期間の目安 |
|---|---|
| 日本側書類の準備・アポスティーユ | 1〜3週間 |
| DSC・社名予約 | 1週間程度(書類準備と並行可) |
| SPICe+申請〜設立証明書 | 1〜2週間 |
| 口座開設・送金・株式割当て・FC-GPR | 3〜6週間 |
| 費用項目 | 目安 |
|---|---|
| 社名予約(SPICe+ Part A) | 1,000ルピー |
| 登記手数料 | 授権資本150万ルピー以下は不要 |
| 定款の印紙税 | 州により数百〜数千ルピー |
| DSC | 1名あたり1,500〜3,000ルピー程度 |
| 株式評価書 | 依頼先により数万ルピー〜 |
| 専門家報酬(設立一式) | 数万〜数十万ルピー。日系の会計事務所はさらに高い傾向 |
費用は実務家の公表価格をもとにした目安で、州・資本金額・依頼先により変わります。
よくある失敗・注意点
- アポスティーユの取得に想定以上の時間がかかり、社名予約の有効期限(20日)が切れる。書類の認証を先に終えてから社名予約に進むのが安全です。
- 書類間で親会社名・取締役名の英字表記が揃っていない。
- 送金時に目的(株式払込)を銀行に明示せず、FIRCが発行されない。
- 60日以内に株式を割り当てず、送金額の返金義務が生じる(60日経過後15日以内)。
- FC-GPRの遅延。遅延提出手数料(LSF)の対象となり、長期化すると罰則のリスクがあります。
次にやること
- 設立直後の手続きは設立後3か月の必須手続きで確認してください。
- 追加出資や親子ローンは資金供給と利益還流、GST登録はGSTの基本、雇用開始時は労働法典ガイドを参照してください。
個別の判断は専門家(CA・弁護士・税理士)にご確認ください。
Questions on this topic
外資100%でインドに子会社を設立できますか?
多くの業種では、外資100%の子会社を政府の事前承認なしで設立できます(自動ルート、2026年10月時点)。ただし、防衛や通信、一部の小売・メディアなど、出資比率の上限や政府承認が必要な業種があります。まずDPIITのFDI政策で自社の業種の上限と承認ルートを確認してください。
子会社の設立にはどれくらいの期間がかかりますか?
MCAの統合申請(SPICe+)自体は書類が揃えば比較的短期間で処理されますが、実務上は準備を含め数週間から2か月程度を見込むのが一般的です。時間がかかるのは、日本側書類の公証・アポスティーユ、取締役の電子署名(DSC)取得、社名の承認などの準備段階です。設立後の銀行口座開設や外資受入報告までを含めたスケジュールで計画してください。
インド子会社には居住取締役が必要ですか?
必要です。会社法149条3項により、各会計年度(4月〜翌3月)にインド国内に通算182日以上滞在した取締役を少なくとも1名置く必要があります(2026年10月時点)。判定は国籍ではなく物理的な滞在日数によるため、日本人駐在員が要件を満たす場合もあります。設立初年度は日数を按分する扱いがあります。