インド進出の形態を選ぶ:子会社・LLP・支店・駐在員事務所・プロジェクト事務所
インドの5つの進出形態について、できる活動、承認の要否、税率、設立期間、撤退のしやすさ、取締役要件を比較し、自社に合う形態の選び方を整理します。進出形態を検討中の経営企画・法務担当者向けです。
このガイドでわかること
- インドで日本企業が選べる5つの拠点形態と、それぞれの位置づけ
- 「何ができるか」「誰の承認が要るか」「税率」「撤退のしやすさ」の比較
- 自社の目的から形態を絞り込むための判断の順番
5つの形態の比較表
| 項目 | 現地法人(Pvt Ltd) | LLP | 支店(BO) | 駐在員事務所(LO) | プロジェクト事務所(PO) |
|---|---|---|---|---|---|
| できる活動 | 定款の範囲で原則自由(FDI規制の範囲内) | 合意の範囲で事業可(外資100%自動認可かつ業績条件のない業種) | 輸出入促進、コンサル・専門サービス、IT・ソフト開発、親会社製品の技術サポート、親会社の研究など許可された活動のみ。製造は不可 | 親会社の代表、連絡窓口、輸出入促進、技術・資本提携の促進のみ。収益活動は不可 | 受注した特定プロジェクトとその付随業務のみ |
| 承認 | 会社登記(企業省・MCA)。自動認可ルートなら投資前の承認不要、事後報告 | LLP登記(MCA)。FDIは事後報告 | AD銀行経由でRBIのUIN付与・承認 | AD銀行経由でRBIのUIN付与・承認 | AD銀行経由(契約・資金条件を満たせば一般許可的に処理) |
| 法人税率(基本) | 30%または25%(売上規模による)。選択制の22%も可 | 30% | 35%(外国法人) | 収益なし(申告・報告義務はあり) | 35%(外国法人) |
| 設立期間の目安 | 書類準備込みで約1〜2か月 | 会社とほぼ同程度 | 数週間〜数か月(RBI照会の有無で変動) | 同左 | 比較的短い(目安10〜15日とする実務家解説あり) |
| 撤退のしやすさ | 登記抹消や清算手続きが必要で、長期化しやすい | 会社と同様に清算手続きが必要 | AD銀行への閉鎖申請と残余資金送金。比較的簡便 | 同左。最も撤退しやすい | プロジェクト完了で閉鎖 |
| 人的要件 | 取締役2名以上、うち1名以上は居住取締役(会計年度中182日以上インドに滞在) | 指定パートナー2名以上、うち1名以上がインド居住者 | 取締役要件なし(現地責任者を置くのが通常) | 同左 | 同左 |
税率は2026年10月時点の基本税率で、別途サーチャージと4%の教育目的税(Health and Education Cess)がかかります。
形態ごとの補足
現地法人(Private Limited Company)
日系企業の大半が選ぶ形態です。インドの内国法人として扱われるため、取引先との契約、銀行融資、政府調達、各種優遇策を受ける上で最も制約が少ない形です。親会社からの資金は出資(FDI)か親子ローン(ECB)で入れ、利益は配当・ロイヤルティ等で還流します(詳しくは資金供給と利益還流)。
一方で、会社法(Companies Act, 2013)の年次手続き、税務監査、移転価格文書など継続的なコンプライアンス負担があります。設立手順はインド子会社の設立手順を参照してください。
LLP
税率は30%(サーチャージ・教育目的税別)で、利益分配に追加の課税がない点が特徴です。ただし外資が入れるのは、外資100%が自動認可で、かつFDIに業績連動条件が付いていない業種に限られます。日本の親会社側でLLPを税務上どう扱うかの確認も必要です。
支店(BO)
日本本社と同一法人のため、インドでの損失を本社と通算しやすい一方、インドで課税される利益の範囲や恒久的施設(PE)の論点が親会社に直接及びます。RBIの従来基準では、本国で直近5年間の黒字と純資産10万米ドル以上が目安とされ、満たさない場合は親会社等の保証状(Letter of Comfort)で補う運用です。
駐在員事務所(LO)
市場調査や取引先開拓の「最初の一歩」に向きます。従来基準では直近3年の黒字と純資産5万米ドル以上が目安で、有効期間は原則3年(NBFC・建設開発業は2年)です。収益活動をした場合はPE認定や規則違反のリスクがあるため、営業活動の線引きを社内で明確にしてください。詳しくは駐在員事務所・支店・プロジェクト事務所の設立へ。
プロジェクト事務所(PO)
インド企業から受注した建設・据付などの契約を実行するための時限拠点です。契約が二国間・多国間の国際金融機関の資金、またはインドの金融機関の融資で賄われていることなどが条件になります。
選び方の手順
- インドで売上を立てるかを決めます。立てないならLO、立てるなら次へ。
- 期間限定の受注案件かを確認します。特定プロジェクトだけならPOを検討します。
- 製造や国内販売を含むかを確認します。含むなら現地法人一択です。
- 損失の本社通算やスピードを優先するかを検討し、BOと現地法人を比較します。
- 業種がFDI規制(禁止業種・政府認可ルート・出資上限)に当たらないかを確認します。
よくある失敗・注意点
- LOで実質的な営業・受注活動を行い、税務上のPE認定を受ける。
- 居住取締役を確保しないまま現地法人設立を進め、手続きが止まる。
- 支店の税率(35%)と現地法人の税率(22〜30%)の差を考慮せずに形態を決める。
- 陸上で国境を接する国の資本が間接的に入っている場合、業種を問わず政府認可が必要になる点(プレスノート3)を見落とす。
- 2025年公表の新規則案(LO・BOの純資産・黒字要件の撤廃など)を確定事項として扱う。2026年10月時点で施行を確認できていません。
次にやること
- 現地法人ならインド子会社の設立手順と期間・費用へ。
- LO・BO・POなら駐在員事務所・支店・プロジェクト事務所の設立へ。
- 税負担の全体像は日印の税務の基本と移転価格の基本で確認してください。
個別の判断は専門家(CA・弁護士・税理士)にご確認ください。
Questions on this topic
外資100%でインドに子会社を設立できますか?
多くの業種では、外資100%の子会社を政府の事前承認なしで設立できます(自動ルート、2026年10月時点)。ただし、防衛や通信、一部の小売・メディアなど、出資比率の上限や政府承認が必要な業種があります。まずDPIITのFDI政策で自社の業種の上限と承認ルートを確認してください。
日本企業がインドに進出する際、どの拠点形態を選べばよいですか?
インドで売上を立てて事業を行うなら、非公開会社(Pvt Ltd)の子会社が最も一般的です。市場調査や連絡業務のみなら駐在員事務所、特定の受注案件の遂行のみならプロジェクト事務所、限定的な事業を本社の一部として行うなら支店も選択肢です。LLPも可能ですが、資金調達や業種の制約を踏まえて比較します。
インド子会社には居住取締役が必要ですか?
必要です。会社法149条3項により、各会計年度(4月〜翌3月)にインド国内に通算182日以上滞在した取締役を少なくとも1名置く必要があります(2026年10月時点)。判定は国籍ではなく物理的な滞在日数によるため、日本人駐在員が要件を満たす場合もあります。設立初年度は日数を按分する扱いがあります。