駐在員事務所・支店・プロジェクト事務所の設立:承認手続き、要件、できること・できないこと
外国企業がインドに駐在員事務所(LO)・支店(BO)・プロジェクト事務所(PO)を開く際の、AD銀行・RBIの承認手続き(Form FNC)、要件、活動範囲、年次活動報告(AAC)を整理します。2025年公表の新規則案の状況も記載しています。
このガイドでわかること
- LO・BO・POそれぞれの活動範囲と、できないこと
- AD銀行経由の承認手続き(Form FNC、UIN)と、RBIの事前承認が必要なケース
- 設立後の登録・年次活動報告(AAC)と閉鎖の手続き
- 2025年公表の新規則案と、2026年10月時点の状況
3形態の活動範囲
| 区分 | 駐在員事務所(LO) | 支店(BO) | プロジェクト事務所(PO) |
|---|---|---|---|
| できること | 親会社の代表・連絡窓口、輸出入の促進、技術・資本提携の促進 | 物品の輸出入、専門・コンサルティングサービス、親会社が行う研究、技術・資本提携の促進、購買・販売代理、ITサービス・ソフト開発、親会社製品の技術サポート、外国航空・海運会社の業務 | インドで受注した特定プロジェクトの実行と付随業務 |
| できないこと | 収益を伴う一切の事業活動、受注・契約締結 | 製造(インド企業への委託製造は可)、小売、許可された範囲外の活動 | 契約外の別事業 |
| 経費の原資 | 本社からの送金のみ | 事業収入と本社送金 | 契約収入と本社送金 |
| 有効期間 | 原則3年(延長可) | 期限なし | プロジェクト期間 |
| 税務 | 収益なし。ただしPE認定リスクあり | 外国法人として課税 | 外国法人として課税 |
RBIの事前承認が必要なケース
AD銀行限りで処理できず、RBIの事前承認が必要になる主なケースは次のとおりです(2026年10月時点)。
- 申請者がパキスタン国籍・パキスタンで登記された法人の場合
- バングラデシュ、スリランカ、アフガニスタン、イラン、中国、香港、マカオの申請者が、ジャンムー・カシミール、北東部、アンダマン・ニコバル諸島に開設する場合
- 主たる事業が防衛、通信、民間警備、情報・放送の場合(国防省等との契約に基づく防衛分野のPOを除く)
- NGO、非営利団体、外国政府機関
- 申請者の主たる事業が、外資100%の自動認可ルートで認められていない分野の場合
日本企業の場合、上記に当たらなければAD銀行の権限内で処理されるのが通常です。ただし親会社の株主に上記の国の資本が入っている場合は、事前に専門家に確認してください。
設立手順
- AD銀行の選定 インドで取引予定のAD Category-I銀行(日系メガバンクのインド支店や主要インド銀行)を決めます。
- 書類の準備 Form FNC、親会社の登記事項証明書と定款(英訳、本国でのアポスティーユまたは領事認証)、直近の監査済み財務諸表、取締役会決議、保証状(必要な場合)、KYC書類などを揃えます。
- Form FNCの提出 AD銀行が申請者の背景、資金源、活動内容を審査し、RBIへUINの付与を依頼します。
- 承認書の取得と開設 承認書の発行後6か月以内に事務所を開設します。
- 会社法上の登録 インドに事業所を設けた外国会社は、会社法に基づき企業登記局(ROC)に外国会社として登録します(Form FC-1)。
- PAN・TAN・銀行口座 PANとTANを取得し、承認された用途の銀行口座を開設します。LOが複数の口座を持つにはRBIの許可が必要です。
- その他の登録 州の店舗・事業所法、BO・POの場合はGST登録などを行います。
BOの承認目安としての純資産は、払込資本と剰余金から無形資産を控除した額で判定されます。
開設後の継続義務
| 義務 | 内容 | 提出先 |
|---|---|---|
| 年次活動報告(AAC) | 3月31日現在の活動が承認範囲内であることを監査人が証明 | LO・BO:AD銀行と所得税当局(国際課税)。PO:AD銀行 |
| 外国会社の年次書類 | 財務諸表(FC-3)、年次報告(FC-4)など | ROC(MCA) |
| 法人税申告・税務監査 | BO・POは課税所得の申告。LOも所定の情報申告あり | 所得税当局 |
| 移転価格 | BO・POと本社の取引は移転価格税制の対象 | 所得税当局 |
| 責任者交代 | 最高責任者の変更はAD銀行へ通知 | AD銀行 |
AACの提出が遅れたり監査人の指摘があったりすると、AD銀行はRBIに報告します。LOの延長申請時もAACの提出状況が確認されます。
送金と閉鎖
- BOの利益送金:インドの税金を納めた後の利益を本社に送金できます。
- POの余剰資金:プロジェクト期間中も、監査人証明等を条件に送金できます。
- 閉鎖:AD銀行に閉鎖申請を行い、税務の完了を示す書類や監査人の証明書をもとに残余資金を本社に送金します。資産を新設の子会社に引き継ぐことも、閉鎖時に限り認められます。
2025年新規則案の主な内容
RBIは2025年10月、外国企業の拠点設立に関する新規則案を公表しました。主な提案は次のとおりです。
- LO・BOの純資産・黒字要件の撤廃
- BO・POの活動を、FDI政策で禁止または政府認可ルートとされた活動以外に広げる
- 追加拠点の開設を、AD銀行への通知で可能にする
- 1つのPOで複数プロジェクトの実行を可能にする
- 複数拠点のAACを1本にまとめる
2026年10月時点で、最終規則として公布・施行されたことは確認できていません。施行されると要件が大きく緩和されるため、申請前にAD銀行に最新の取扱いを確認してください。
よくある失敗・注意点
- LOの駐在員が価格交渉や受注を行い、PE認定・承認条件違反となる。
- LOの有効期間(3年)の延長申請を忘れる。
- AACの提出遅れで、AD銀行から口座取引を制限される。
- 外国会社としてのROC登録(FC-1)を行わない。
- 新規則案の内容を前提に計画を立て、現行要件を満たさないことが後で判明する。
次にやること
- 形態の比較はインド進出の形態を選ぶ、現地法人への切り替えはインド子会社の設立手順を参照してください。
- 本社との取引価格は移転価格の基本、PEリスクは日印の税務の基本で確認してください。
個別の判断は専門家(CA・弁護士・税理士)にご確認ください。
このテーマのよくある質問
日本企業がインドに進出する際、どの拠点形態を選べばよいですか?
インドで売上を立てて事業を行うなら、非公開会社(Pvt Ltd)の子会社が最も一般的です。市場調査や連絡業務のみなら駐在員事務所、特定の受注案件の遂行のみならプロジェクト事務所、限定的な事業を本社の一部として行うなら支店も選択肢です。LLPも可能ですが、資金調達や業種の制約を踏まえて比較します。
駐在員事務所で売上を立てることはできますか?
できません。駐在員事務所は親会社の代表、輸出入の促進、技術・資本提携の促進、連絡窓口に活動が限られ、経費は本社からの送金でまかないます(2026年10月時点)。インドで契約・請求を行う必要が出てきたら、子会社や支店への切り替えを検討してください。
駐在員事務所を開設するための要件と有効期間は?
RBIのマスターディレクションでは、原則として親会社に直近3会計年度の黒字実績と純資産5万米ドル以上が求められます(2026年10月時点)。要件を満たさない子会社は、親会社等のレター・オブ・コンフォートで申請できます。有効期間は原則3年で、AD銀行で延長できます。申請はAD銀行経由で行います。