日印社会保障協定と適用証明書:駐在員の年金・PFの二重加入を防ぐ手続き
日本からインドへ派遣する社員の社会保険の扱いを整理します。日印社会保障協定の仕組み、5年以内の派遣で日本の制度に残るための適用証明書の申請、インドPFの国際労働者ルール、延長と帰国時の手続きを人事担当者向けにまとめます。
このガイドでわかること
- 日印社会保障協定で何が免除され、何が免除されないか
- 日本から派遣する社員について、出国前に日本年金機構へ出す申請
- インドの従業員積立基金(EPF)の「国際労働者」ルール
- 派遣期間の延長・短縮・帰国時の手続き
協定の仕組み
社会保障協定には「二重加入の防止」と「加入期間の通算」の2つの役割があります。
| 役割 | 内容 | 日印協定での扱い |
|---|---|---|
| 二重加入の防止 | どちらか一方の国の制度だけに加入する | EPS・EPFとも対象 |
| 加入期間の通算 | 年金の受給資格期間を両国で合算する | EPSは対象。EPFは一時金のため通算の対象外 |
医療保険(日本の健康保険、インドのESI)は協定の対象に含まれていません。駐在員の医療は、日本の健康保険の海外療養費や、会社が手配する海外旅行・駐在員保険で備えるのが一般的です。自営業者も協定の対象外です。
日本から派遣する場合の手続き
対象となる人
日本の事業所に雇用されたまま、インドの子会社・支店などに一時的に派遣される社員です。派遣期間が5年を超えない見込みであることが前提になります。
手順
- 派遣期間と雇用関係を確定する:出向契約・辞令で、派遣元が日本法人であること、派遣期間の見込みを明確にします。
- 適用証明書交付申請書を作成する:日本年金機構の「日・インド社会保障協定」申請書一覧から、厚生年金保険用の様式を使います。
- 提出する:厚生年金保険の申請書は、日本年金機構の社会保障協定担当窓口(東京都調布市)へ郵送します。窓口での相談や提出は最寄りの年金事務所で受け付けています。国民年金の加入者は最寄りの年金事務所に提出します。
- 証明書を受け取り、インドの受入企業に渡す:受入企業は証明書の写しを保管し、EPFOへの登録対象から外します(Excluded Employee)。
- 赴任後も保管する:EPFOや監査人から提示を求められることがあるため、本人と受入企業の双方で保管します。
申請の時期は、派遣開始予定日の6か月前ごろからが目安です(2026年10月時点)。
インドPFの国際労働者(IW)ルール
インドのEPFでは、インド国籍以外の社員で、EPF適用事業所に勤務する人を「国際労働者」と定義しています。主なルールは次のとおりです。
- 拠出は賃金上限(2026年9月以降は月額2万5,000ルピー)にかかわらず、給与全額が対象になる
- 協定相手国の国籍を持ち、母国の適用証明書を持つ人は加入が免除される
- 協定相手国の国民は、インドでの雇用終了時に積立金全額を引き出せる
日本からの駐在員で適用証明書がない場合、インドでも日本でも保険料を払う「二重負担」になります。給与の高い駐在員ほど影響が大きいため、赴任前の申請を徹底してください。
延長・短縮・帰国時の扱い
| ケース | 手続き |
|---|---|
| 派遣が5年を超えることになった | 延長前に「適用証明期間継続・延長申請書」を提出。両国当局の合意により延長が認められる場合がある(期間は個別に確認) |
| 8年を超えてインド勤務が続く | 両国の合意により、日本の年金制度に継続加入できる余地がある(個別申請) |
| 予定より早く帰国した | 適用証明書の余白に実際の派遣終了日(西暦)を記入し、日本年金機構の社会保障協定担当へ送付 |
| 延長が認められなかった | 原則としてインドの制度に加入。日本の厚生年金に任意で残る特例加入制度を検討 |
延長申請では、インドの雇用ビザの有効期間を示す書類を添付すると審査が早まるとされています。ビザの有効期間を超える延長は認められないことがあるため、ビザ更新と同時に管理しましょう。
インドから日本へ来る社員の場合
インドの社員が日本に短期赴任する場合は、EPFOが適用証明書を発行します。社員がEPFOの国際労働者ポータルで申請し、雇用主が電子署名で確認したうえで、管轄の地域事務所が承認する流れです。日本の受入企業は、証明書があれば厚生年金・国民年金の加入を免除できます。
よくある失敗・注意点
- 赴任後に申請し、証明書が届くまでの間にインド側でPFが控除される
- 出向ではなく現地採用(日本法人との雇用関係なし)に切り替えたのに、適用証明書をそのまま使う
- 延長申請を延長開始後に行い、空白期間が生じる
- 早期帰国時の届出を忘れ、記録が実態と合わなくなる
次にやること
- ビザと外国人登録を確認する:日本人駐在員のビザと外国人登録
- 現地社員のPF・ESIを確認する:インドでの採用と給与の基本
- 個人所得税への影響を確認する:駐在員の個人所得税と生活の基本
- 設立後の各種登録を整理する:設立後のチェックリスト
個別の判断は専門家(CA・弁護士・税理士)にご確認ください。
このテーマのよくある質問
日本からの駐在員もインドのEPFに加入しなければなりませんか?
外国人従業員(International Worker)にも原則としてEPFが適用されます。ただし、日印社会保障協定に基づき日本の年金制度の適用証明書を取得して提出すれば、一時派遣の駐在員はインドの年金制度への加入が免除される場合があります。派遣期間や雇用契約の形態によって扱いが変わるため、赴任前に確認してください。