インドTDS(源泉徴収)実務ガイド:新所得税法の税率表、TAN、納付・四半期申告、Form 130/131、罰則
2026年4月施行の2025年所得税法に基づき、給与・請負・専門家報酬・家賃・非居住者への送金の源泉徴収率、TAN、納付と四半期申告の期限、源泉徴収証明書(旧Form 16/16A)、遅延時の利息と罰則を、新旧の条文・様式番号の対応とともに整理します。経理担当者向け。
このガイドでわかること
- 新しい所得税法で、源泉徴収(TDS)の条文と様式がどう変わったか
- 給与・請負・専門家報酬・家賃・非居住者送金の税率と基準額
- TANの取得、税の納付、四半期申告、源泉徴収証明書の流れ
- 遅延したときの利息・手数料・罰則
1. TDSの全体像と新旧対応
インドでは、支払者が一定の支払いから税を差し引いて国に納付し、受取人はその分を自分の税額から差し引きます。日本の源泉徴収に近い仕組みですが、対象の範囲がずっと広く、企業間の請負代金や家賃にも及びます。
| 内容 | 旧法(1961年法) | 新法(2025年法) | 申告様式 |
|---|---|---|---|
| 給与 | 192条 | 第392条 | Form 138(旧24Q) |
| 請負 | 194C条 | 第393条(1) 表 Sl.6(i) | Form 140(旧26Q) |
| 専門家報酬・技術役務 | 194J条 | 第393条(1) 表 Sl.6(iii) | Form 140 |
| 家賃 | 194I条 | 第393条(1) 表 Sl.2 | Form 140 |
| 非居住者への支払い | 195条 | 第393条(2) 表 Sl.17 など | Form 144(旧27Q) |
2026年3月31日以前の支払いには旧法が適用されるため、同じ年度の訂正申告などでは旧様式も使います。
2. 主な税率表(居住者への支払い、2026年10月時点)
| 支払いの種類 | 税率 | 基準額 |
|---|---|---|
| 給与 | 所得税の累進税率(従業員が選んだ税制による) | 課税所得がある場合 |
| 請負(個人・HUF) | 1% | 1回3万ルピー超、または年間合計10万ルピー超 |
| 請負(法人など) | 2% | 同上 |
| 専門家報酬 | 10% | 年5万ルピー超 |
| 技術役務の対価(専門家報酬以外)、コールセンター | 2% | 年5万ルピー超 |
| 取締役報酬(給与以外) | 10% | 基準額なし |
| 家賃(土地・建物・家具) | 10% | 月5万ルピー超 |
| 家賃(機械・設備) | 2% | 月5万ルピー超 |
| 手数料・仲介料(保険手数料を除く) | 2% | 年2万ルピー超 |
受取人がPAN(納税者番号)を提出しない場合は、原則として20%以上の高い税率で源泉徴収します。
3. 非居住者(日本本社など)への送金
| 支払い | 国内法の税率 | 日印租税条約 |
|---|---|---|
| 配当 | 20%+サーチャージ・教育目的税 | 10% |
| 利子(一般) | 20%+サーチャージ・教育目的税 | 10% |
| ロイヤルティ | 20%+サーチャージ・教育目的税 | 10% |
| 技術上の役務に対する料金(FTS) | 20%+サーチャージ・教育目的税 | 10% |
| その他の課税所得(事業所得など) | 適用税率(外国法人は35%基準) | PEがなければ原則課税なし |
送金の手順は次のとおりです。
- 日本側からTRCと、e-Filingで提出済みのForm 41(旧Form 10F)の写しを受け取る
- 支払いの性質(ロイヤルティ、FTS、事業所得など)と条約税率を判定する
- 必要に応じてCAの証明書Form 146(旧15CB)を取得し、Form 145(旧15CA)を提出する
- 源泉税を納付し、四半期ごとにForm 144で申告する
- 日本本社にForm 131(源泉徴収証明書)を発行する。日本での外国税額控除の証拠になります
4. TANと納付・申告・証明書
TAN(源泉徴収義務者番号)
源泉徴収をする事業者は、PANとは別にTAN(Tax Deduction and Collection Account Number)を取得します。設立直後、最初の支払い前に申請しておきましょう。拠点ごとに取得することもできます。
納付期限
源泉徴収した税は、原則として翌月7日までに納付します。3月分(年度末)は4月30日までです。納付は電子チャラン(新様式ITNS 281N)で行います。
四半期申告
| 対象四半期 | 申告期限 |
|---|---|
| 4〜6月 | 7月31日 |
| 7〜9月 | 10月31日 |
| 10〜12月 | 1月31日 |
| 1〜3月 | 5月31日 |
給与はForm 138、居住者への給与以外はForm 140、非居住者はForm 144で申告します。
源泉徴収証明書
| 証明書 | 旧様式 | 発行期限 |
|---|---|---|
| Form 130(給与) | Form 16 | 年度終了後の6月15日まで |
| Form 131(給与以外) | Form 16A | 四半期申告の期限から15日以内 |
Form 131は、四半期申告を提出した後にTRACESから作成します。
5. 遅延・誤りの罰則(2026年10月時点)
| 不履行 | 結果 | 新法の条文 |
|---|---|---|
| 源泉徴収しなかった | 月1%の利息、源泉徴収義務者としての納税責任 | 第398条 |
| 徴収したが納付しなかった | 月1.5%の利息 | 第398条 |
| 四半期申告の遅延 | 1日200ルピー(源泉税額が上限) | 第427条(旧234E) |
| 申告の未提出・誤り | 1万〜10万ルピーの罰金 | 第461条(旧271H) |
| Form 130の発行遅延 | 1日あたりの罰金(1件100ルピー程度) | — |
このほか、居住者への支払いで源泉徴収をしなかった費用は、法人税の計算で一部損金不算入になります。非居住者への支払いで源泉徴収を怠ると、全額が損金不算入となる可能性があり、影響が大きくなります。
よくある失敗・注意点
- 日本本社への技術指導料・システム利用料を「立替精算」として扱い、源泉徴収していない
- Form 41が年度ごとに必要なことを忘れ、国内法の20%超で徴収してしまう
- 受取人のPANの誤記で、相手方の税額控除に反映されない
- 新法の施行後も旧セクション番号で支払いコードを選び、申告エラーになる
- 四半期申告は出したが、Form 131を発行していない
次にやること
- 条約税率とPEの考え方はインドの法人税・源泉税と日印租税条約の基本で確認する
- 納付・申告期限を年間コンプライアンス・カレンダーに登録する
- ロイヤルティ・役務費の金額の妥当性は移転価格の基本を参照する
- 配当・利子の送金方法は資金調達と資金回収で比較する
- GST上の源泉徴収(GSTR-7)はインドGSTの基本を参照する
個別の判断は専門家(CA・弁護士・税理士)にご確認ください。
Questions on this topic
インド子会社から日本本社への配当にかかる源泉税率は?
日印租税条約では配当の源泉税率は10%です(2026年10月時点)。インド国内法の税率(20%)より有利なため、日本本社が居住者証明書(TRC)などを提出することで条約税率を適用できます。日本側では外国子会社配当益金不算入制度の対象となるか確認してください。
日本本社がロイヤルティや技術指導料を受け取る場合の源泉税率は?
日印租税条約では、使用料(ロイヤルティ)と技術役務料(FTS)の源泉税率はいずれも10%です(2026年10月時点)。条約を適用するにはTRCなどの書類提出が必要で、送金時には送金者の申告とCAの証明(2026年4月以降はForm 145/146)も必要になります。関連者間取引のため、移転価格の文書化も求められます。
海外送金時のForm 15CA/15CBは今も必要ですか?
2026年4月1日に新しい所得税法(Income-tax Act, 2025)が施行され、2026年4月1日以降の送金からはForm 15CAがForm 145、Form 15CBがForm 146に置き換えられたと解説されています(2026年10月時点)。送金者の申告とCAの証明という仕組み自体は続いています。銀行やCAに最新の様式を確認してください。